アンテラの魔術通信

アブラメリン魔術について

昨今、西洋魔術やスピリチュアル系のグッズを取り扱うショップなどにおいて、アブラメリン魔術を応用した呪具やアクセサリーが販売されていると聞きます。また当社に寄せられるお客様の声でも、アブラメリンとは一体どのような魔術なのか、さらに実際の効果のほどはどうなのかといったご質問も多数いただいておりますので、この場を借りまして簡単に解説(回答)させていただきたいと思います。

アブラメリンとは

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そもそもアブラメリン(Abramelin)というのは、14世紀に活躍したエジプト人魔術師の通称名とされているのですが、正式な歴史文献等にその実在を確証付ける記述は現在のところ発見されていません。そのため、後世の創作ではないかと疑う研究家も多く、我らがアンテラ・サチェロもまたその懐疑派の1人です。

「アブラメリン魔術とは太古の護符魔術を収集、再編纂した大系に過ぎない。また、その名を冠した魔導士が実在したという逸話については全くの虚偽であり、考証家の言を待たずとも我が透視によってすでに明白である。この偽りの存在を作り上げたのは偉大なるも罪深き魔術師、マクレガー・メイザースその人に他ならない」と、高等魔術に関する専門講義で指弾しています。マクレガー・メイザースと言えば、19世紀にロンドンにて黄金の夜明け団を設立した魔術師として有名ですが、アブラメリンに限らず彼が復活させたというエノク魔術の大要についても、大半が独自の創作ではないかという疑いが持たれています。

なお、アブラメリン魔術を最初に紹介したのは、14世紀のユダヤ人魔術師・アブラハムとされています。この人物が『アブラメリンの高等魔術』という書を著し、それが世に広まったと伝えられているのですが、こちらの実在性についてもアブラメリン同様に疑わしい部分が多く、当時のイギリス王朝や神聖ローマ帝国に仕えていた宮廷魔術師に関する様々な伝承が独り歩きして作られた架空の人間、というのが現在の定説です。

ではアブラメリン魔術というのは偽の魔術大系なのかと聞かれれば、それに関しては否であると答えるしかありません。たとえ魔術師アブラメリンが虚構であっても、術自体の効果ははっきりあると断言できます。前述した通り、そこには中世以降に散逸した護符魔術の大系を不完全ながらに復活させた内容が含まれているからです。

アブラメリンの魔方陣

この魔術の最大の特徴はマジックスクエア(魔方陣)と呼ばれる、独特の護符を使用するところにあります。縦横等分に区切られた正方形のマス目に特定の堕天使の名や呪文の文字を配し、これをもって召喚と使役の結界空間を作り上げます。その上で呼び出した悪魔に命令を下し、あるいは守護天使と交信するというのが概容です。

術の行使に当たっては術者自身に極度の精進潔斎が求められるため、常人がこれを行うのはまず無理でしょう。鍛錬されていない者が安易に行えば、身を清める段階で精神に異常を来す恐れさえあります。しかし術の完全再現は難しいとしても、正しく作られたマジックスクエアにはそれ自体に強力な精霊のパワーが宿るので、魔術アクセサリーに応用するという考え方は、それなりに理に適っていると言えるでしょう。

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